茨城の土壌細菌から生まれた薬が、世界の人々の命を救う!!

臓器移植に光を投げかける新薬を、ニューヨークタイムズ紙も絶賛!

茨城県の筑波山で採取された土壌の中に棲む細菌から、世界中でたくさんの人たちの命を救う薬が誕生しました。その薬は、茨城県つくば市に研究所を持つアステラス製薬が開発した「プログラフ」という免疫抑制剤。臓器移植の際に免疫システムが引き起こす、拒絶反応を抑える効果を持つ薬です。1991年12月に国内で申請し、1993年6月に新発売。それ以降欧米などで順次発売され、2010年9月末現在で96カ国で販売されています。

タクロリムスの結晶

この免疫研究関係の新薬開発プロジェクトが発足したのは1970年代の中頃。土の中に棲む微生物から新薬の種を発見するため、アステラス製薬は国内各地の土壌調査を実施しました。その調査の一環として1983年に茨城県の筑波山からサンプルを採取。そして1984年、持ち帰った筑波山の土壌サンプルから、プログラフの薬効成分であるタクロリムス(FK 506)生産菌が発見されたのです。

しかし、新薬を完成させることは簡単ではありません。さまざまなハードルを乗り越えて、新薬の販売にこぎ着けるまでは最低でも10年はかかると言われています。その第一歩が、どのような製剤で投与すれば、一番効果的なのかを見極めること。少ない分量でも効き目を示すタクロリムス(FK 506)は、血液中にどのくらい薬剤がとけ込んでいるか測定する方法がなかったため、同じ条件での実験を繰返しデータを集め、一番治療効果が高く副作用の少ない製剤を選択しました。そして、飲み薬としての錠剤と注射用アンプルの2種類が創られたのです。

その後、1986年に国際移植学会で千葉大学の落合講師がタクロリムス(FK 506)の実験データを発表。1989年には米国ピッツバーク大学のスターツル教授により初の臨床応用有用性が確認され、人体への投与が可能になりました。そして同年、英国キングスカレッッジの肝臓医 Dr ウイリアムスより外交ルートを通じて英国保健省から日本の厚生省(現・厚生労働省)に緊急輸出の要請があり、まだ未発表ではありましたが人道的見地から提供し患者に投与されました。

そしてついに、1989年10月18日、アメリカの新聞ニューヨークタイム科学面のトップニュースに「臓器移植における新薬のグレートサクセス」という見出しが踊りました。これは臓器医療において全米でも主導的な立場にあるピッツバーグ大学で、タクロリムス(FK 506)が臨床試験に使用されたことを報じる記事。そして現在では世界の移植医療の現場でグローバルスタンダードとして広く使用されています。

微生物に秘められた不思議な能力が、新しい薬を生み出す

新薬の開発は、人間の力だけでできるものではありません。自然界に宿る秘められた力が必要です。その力の一つが、土の中に棲む微生物。タクロリムス(FK 506)も、筑波山の土壌に棲む放線菌の代謝物から創られました。このような自然界の宝物を発見するため、現在、アステラス製薬は日本国内のみならず、東南アジア地域など諸外国と協定を結び探索を行っています。

こうして、さまざまな地域の土壌をサンプリングするのには理由があります。環境が異なると生息する微生物の種類に違いが見られるからです。そこで、これまでに探索対象とされていなかった地域や、多種類の微生物が生息していることが期待できる地域を重点的に調査。また、土壌に棲む微生物以外にも、水中に棲む微生物や昆虫にまで対象を広げ、新薬開発の手がかりを探しています。

土壌の採取は、最初に開発したい薬があって行われる場合もありますが、それはごく稀な一部のケース。ほとんどが採取された細菌や微生物に応じて新薬の開発は行われます。具体的には数万株単位の微生物を収集し、それらを純粋に種類分けして増やしサンプルを作成。そのサンプルでさまざまな実験を行い、薬になる可能性があるかどうかを慎重に調べます。

このようにして開発された薬は他にもあります。その一つが、真菌感染症治療に効果のあるキャンディン系抗真菌剤「ファンガード」。福島県いわき市の木戸川流域の土壌より分離されたカビから、強い抗真菌活性のもつ化合物を発見し、その化合物を元に合成改良して創製されました。

創薬のためのアプローチとしては、自然界の微生物(細菌、カビ、放線菌など)から薬を作り出す「醗酵技術」以外にも、化学反応を利用して薬を作り出す「低分子合成技術」、ヒトが生来もつ免疫反応を利用して薬を作り出す「抗体医薬技術」などがあります。それらの技術を駆使して、患者を病から救う新しい薬の開発が行われています。

茨城県つくば市を研究拠点として、世界初の新薬開発を推進する

アステラス製薬は、2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した日本最大級の製薬会社です。現在、茨城県に設置された研究拠点は、つくば研究センター(茨城県つくば市)、つくばバイオ研究センター(茨城県つくば市)、高萩合成研究センター(茨城県高萩市)の3カ所。特につくば市には合併前から、旧山之内製薬・旧藤沢薬品工業ともに創薬を担う研究所をもっていました。

また、茨城県やつくば市は科学の振興について積極的で、研究が行いやすい環境が整っていることも研究施設を設置した理由の一つ。茨城県のつくば市は、筑波大学をはじめ産官学の研究所が多く設置され、世界最先端の科学施設と交流が容易にできることも新薬開発には大きなメリットになっています。高エネルギー加速器研究機構との共同研究では、放射光科学研究施設でのたんぱく質X線結晶構造解析など先端科学との融合が新薬の開発に大きく役立っているのです。

その他にも、郊外型研究所として自由な発想が生まれやすい緑豊かな自然環境。さらに、本社や開発部門がある東京と快適なアクセスを実現するつくばエクスプレスの開通など、充実した交通インフラも大きな魅力のひとつです。

アステラス製薬は、2007年12月に買収した Agensys 社、2010年に買収した OSI 社など、さまざまな研究所と連携しながら新薬開発のための研究を行っています。また、アレルギー、自己免疫病、がんなどの主要な疾患領域で治療に有望な化合物の創出や安全な移植医療の確立を目的に、京都大学と「次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点」を設置して研究を実施するなど、病気で苦しむ人たちが本当に求める新薬の開発を行っています。

そして、つくば研究センターでは、最先端の設備・技術を取り入れ、革新的で有用性の高い薬づくりに向けて、創薬研究力をさらに強化。2011年5月には、自然界の生物や微生物などが作り出す天然の物質から薬の元となる化合物を探す「醗酵研究」を行う新研究棟も完成しました。このようにつくばを研究拠点として、茨城発、世界初の新薬の研究開発が推進されているのです。

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